【解説】統計検定準1級 2019年問題2

諸注意

  • 問題本文は公式サイトまたは公式問題集を参照してください
  • 統計検定2級の資格を持つ方を前提に解説していきます

問題2-1

3種類のカードが等しい確率で手に入る。この時、3種類のカードを全て揃えるのに必要な購入回数の期待値を答えよ。

答え 期待値: 5.5

幾何分布を用いた解法

前提知識

  • 式1-1:幾何分布
    ⇨ 本解説では『成功するまでの試行回数を表したモデル』と定義する
  • 式1-2:幾何分布の性質(期待値)
    ⇨ 確率変数Kの期待値は母数\(p\)の逆数に等しい
  • 式1-3:幾何分布の性質(無記憶性)
    ⇨ 全ての試行が独立のため、3種類のカードを揃えるのに必要な購入回数Tの期待値は、それぞれのカードを入手するまでの購入回数Kの期待値の和に等しい

式1

\begin{align}
& K \sim Ge(p) & (1) \\
& E[K]=p^{-1}=\frac{1}{p} & (2) \\
& E[T] = E[K_1]+E[K_2]+E[K_3] & (3) \\
\end{align}

幾何分布と母数

問題文より、3種類のカードは全て等しい確率で手に入るため、i枚目のカードの入手確率\(p_i\)は(残りのカード枚数 / 全てのカード枚数)になります。

式2

\begin{align}
&p_1 = 3/3 \\
&p_2 = 2/3 \\
&p_3 = 1/3 \\
\end{align}

この時、i枚目のカードを入手するまでの購入回数\(K_i\)は以下の幾何分布に従います。

式3

\begin{align}
&K_1 \sim Ge(3/3) \\
&K_2 \sim Ge(2/3) \\
&K_3 \sim Ge(1/3) \\
\end{align}

購入回数の期待値

式1より、3種類のカードを揃えるのに必要な購入回数Tの期待値は以下の式で求めることができます。

式4

\begin{align}
E[T] = E[K_1]+E[K_2]+E[K_3] = p_1^{-1}+p_2^{-1}+p_3^{-1} \\
\end{align}

式2, 3より、3枚のカードの入手確率はそれぞれ\(p_1=3/3, p_2=2/3, p_3=1/3\)になるため、式4に値を代入します。

式5

\begin{align}
E[T] = E[K_1]+E[K_2]+E[K_3] = \frac{3}{3}+\frac{3}{2}+\frac{3}{1} = 5.5 \\
\end{align}

したがって、3種類のカードを揃えるのに必要な購入回数の期待値は5.5回になります。

問題2-2

問題2-1のカードパックに新たに1種類のカードが追加された。Aさんは既に3種類のカードを揃えており、Bさんはこれからカードを揃え始める。この時、AさんとBさんが4種類のカードを揃えるのに必要な購入回数の期待値の差を答えよ。なお、カードは常に等確率で手に入るものとする。

答え 期待値の差: \(7/6\)

解説

幾何分布と母数

問題文より、Aさんがi枚目のカードを入手する確率\(p_{Ai}\)とBさんがi枚目のカードを入手する確率\(p_{Bi}\)は以下の通りになります。

式6

\begin{align}
&p_{A1} = 3/3 \\
&p_{A2} = 2/3 \\
&p_{A3} = 1/3 \\
&p_{A4} = 1/4 \\
\\
&p_{B1} = 4/4 \\
&p_{B2} = 3/4 \\
&p_{B3} = 2/4 \\
&p_{B4} = 1/4 \\
\end{align}

また、対応する幾何分布は以下の通りです。

式7

\begin{align}
& K_{A1} \sim Ge(3/3) \\
& K_{A2} \sim Ge(2/3) \\
& K_{A3} \sim Ge(1/3) \\
& K_{A4} \sim Ge(1/4) \\
\\
& K_{B1} \sim Ge(4/4) \\
& K_{B2} \sim Ge(3/4) \\
& K_{B3} \sim Ge(2/4) \\
& K_{B4} \sim Ge(1/4) \\
\end{align}

購入回数の期待値

式6, 7より、AさんとBさんの購入回数の期待値を求めて、その差を計算します。

式8

\begin{align}
&E[T_A] = \frac{3}{3}+\frac{3}{2}+\frac{3}{1}+\frac{4}{1}=\frac{57}{6} \\
\\
&E[T_B] = \frac{4}{4}+\frac{4}{3}+\frac{4}{2}+\frac{4}{1}=\frac{50}{6} \\
\\
&E[T_A]-E[T_B] = \frac{57}{6}- \frac{50}{6} = \frac{7}{6} \\
\end{align}

したがって、AさんとBさんの購入回数の期待値の差は7/6回になります。

余談

等しい確率で手に入るn種類のアイテムを全て揃えるために必要な試行回数を求める問題を『クーポンコレクター問題』と呼びます。この問題の期待値は次の式で求まります。

式9

\begin{align}
& E[T] = n \left(\frac{1}{1}+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+…+\frac{1}{n}\right) \\
\end{align}

式9に\(n=3\)を代入して、3種類のカードを揃えるのに必要な購入回数の期待値を計算します。

式10

\begin{align}
E[T] &= 3 \left(\frac{1}{1}+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}\right) = 5.5
\end{align}

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