【解説】統計検定準1級 2019年問題1

諸注意

  • 問題本文は公式サイトまたは公式問題集を参照してください
  • 統計検定2級の資格を持つ方を前提に解説していきます

問題1-1

確率変数XとYはそれぞれ独立にポアソン分布に従う。Xの平均が3、Yの平均が2の時、X+Yの期待値と分散を答えよ。

答え 期待値: 5, 分散: 5

ポアソン分布の再生性を用いた解法

前提知識

  • 式1-1:ポアソン分布
  • 式1-2:ポアソン分布の性質(期待値と分散)
    ⇨ 確率変数Xの期待値(平均)と分散はポアソン分布の母数\(\lambda_x\)に等しい
  • 式1-3:ポアソン分布の性質(再生性)
    ⇨ 確率変数XとYが独立にポアソン分布に従う時、確率変数の和もポアソン分布に従い、その平均は母数の和と等しい

式1

\begin{align}
& X \sim Po(\lambda_x) & (1) \\
& E[X]=V[X]=\lambda_x & (2) \\
& X+Y \sim Po(\lambda_x+\lambda_y) & (3) \\
\end{align}

\(X+Y\)の期待値と分散

式1より、確率変数XとYの和の期待値と分散は以下の式で求めることができます。

式2

\begin{align}
& X+Y \sim Po(\lambda_x+\lambda_y) \\
& E[X+Y]=V[X+Y]=\lambda_x + \lambda_y \\
\end{align}

問題文より、Xの平均\(\lambda_x\)が3, Yの平均\(\lambda_y\)が2になるため、式2に代入します。

式3

\begin{align}
E[X+Y] = V[X+Y] = 3+2 = 5\\
\end{align}

したがって、\(X+Y\)の期待値と分散は5になります。

期待値と分散の性質を用いた解法

前提知識

  • 式4-1:期待値の線形性
    ⇨ 確率変数の期待値は、線形の操作(足し算・掛け算)がそのまま反映される
  • 式4-2:分散の加法性
    ⇨ 独立な確率変数の和(または差)の分散は、各確率変数の分散の和に等しい

式4

\begin{align}
& E[X+Y]=E[X]+E[Y] & (1) \\
& V[X \pm Y]=V[X]+V[Y] & (2) \\
\end{align}

\(X+Y\)の期待値と分散

ポアソン分布の期待値と分散は母数\(\lambda\)と等しいため、式4より確率変数XとYの和の期待値と分散は以下の式で求めることができます。

式5

\begin{align}
E[X+Y]=E[X]+E[Y]=\lambda_x+\lambda_y \\
V[X+Y]=V[X]+V[Y]=\lambda_x+\lambda_y \\
\end{align}

問題文より、Xの平均\(\lambda_x\)が3, Yの平均\(\lambda_y\)が2になるため、式5に代入します。

式6

\begin{align}
E[X+Y]=E[X]+E[Y]=3+2=5 \\
V[X+Y]=V[X]+V[Y]=3+2=5 \\
\end{align}

したがって、\(X+Y\)の期待値と分散は5になります。

問題1-2

XとYは問題1-1と同じポアソン分布に従う。\(X+Y\)の観測値が4の時、Xが従う期待値と分布を答えよ。

答え 期待値: 2.4, 分布: 二項分布

二項分布の性質を用いた解法

前提知識

  • 式7-1:二項分布
  • 式7-2:二項分布の性質(期待値)
    ⇨ 二項分布の期待値は母数の 試行回数n × 成功確率p に等しい

式7

\begin{align}
& X \sim B(n, p) & (1) \\
& E[X] = np & (2) \\
\end{align}

二項分布の期待値

問題文より、Xを成功回数、Yを失敗回数、X+Yを試行回数と読み替えることができます。この時、Xは二項分布に従い、母数の試行回数nと成功確率pは以下の通りになります。

式8

\begin{align}
&n=4 \longleftarrow X+Y \\
&p=0.6 \longleftarrow E[X]:E[Y]=3:2 \\
\end{align}

式8より、試行回数nが4, 成功確率pが0.6になるため、式7に値を代入します。

式9

\begin{align}
& X \sim B(4, 0.6) & (1) \\
& E[X] = 4*0.6 = 2.4 & (2) \\
\end{align}

したがって、Xは期待値が2.4の二項分布に従います。

条件付き確率を計算する解法

前提知識

  • 式10-1:ポアソン分布の確率質量関数
  • 式10-2:二項分布の確率質量関数

式10

\begin{align}
& P(X=x) = e^{-\lambda}(\lambda^x / x!) & (1) \\
& P(X=x) = {}_nC_x \cdot p^x \cdot (1-p)^{(n-x)} & (2) \\
\end{align}

ポアソン分布の条件付き確率

\(X+Y=4\)の条件下で確率変数Xがx回発生する確率は以下の条件付き確率に従います。なお、確率変数Yの発生回数が4-x回になる点に注意してください。

式11

\begin{align}
P(X=x, Y=4-x | X+Y=4)
\end{align}

式11を計算して、二項分布の確率質量関数(式10-2)を導出します。

式12

\begin{align}
&P(X=x, Y=4-x | X+Y=4) \\
\\
&= \frac{P(X=x) \cdot P(Y=4-x)}{P(X+Y=4)} \\
\\
&= \frac{e^{-\lambda_x}(\lambda_x^x / x!) \cdot e^{-\lambda_y}(\lambda_y^{(4-x)} / (4-x)!)}{e^{-\lambda_z}(\lambda_z^4 / 4!)} & (1) \\
\\
&= \frac{e^{-3}(3^x / x!) \cdot e^{-2}(2^{(4-x)} / (4-x)!)}{e^{-5}(5^4 / 4!)} & (2) \\
\\
&= \frac{4!}{x!(4-x!)} \cdot \frac{3^x \cdot 2^{(4-x)}}{5^4} \cdot \frac{e^{-3} \cdot e^{-2}}{e^{-5}} & (3) \\
\\
\\
&= {}_4C_x \cdot 0.6^x \cdot 0.4^{(4-x)} & (4) \\
\end{align}

  • 1: ポアソン分布の確率質量関数
  • 2: \(\lambda_x=3, \lambda_y=2, \lambda_z=5\) を代入
  • 3: 式の整理
  • 4(左): 二項係数\(\left(\frac{4!}{x!(4-x!)}={}_4C_x\right)\)
  • 4(中): (具体例)\(\frac{3^3 \cdot 2^1}{5^4} = \left(\frac{3}{5}\right)^3 \cdot \left(\frac{2}{5}\right)^1=0.6^3 \cdot 0.4\)
  • 4(右): \(\frac{e^{-3} \cdot e^{-2}}{e^{-5}} = \frac{e^{-5}}{e^{-5}} = 1\)

以上の結果より、試行回数\(n=4\), 成功確率\(p=0.6\)であることが分かります。後は先述した通り、 \(E[X]=np\)で期待値を計算します。

したがって、Xは期待値が2.4の二項分布に従います。

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