【解説】統計検定準1級 2018年問題5

諸注意

  • 問題本文は公式サイトまたは公式問題集を参照してください
  • 統計検定2級の資格を持つ方を前提に解説していきます

問題5-1

血圧を下げる新薬(A)と従来薬(B)を比較するため、血圧がほぼ等しい高血圧患者6名をランダムに3名ずつ分け、それぞれにA, Bのいずれかを投与した。投与後の血圧測定の結果は以下の通りであった。

\begin{align}
& A = (135, 127, 131) \\
& B = (132, 144, 138) \\
\end{align}

A, Bの効果が等しいという帰無仮説に対して、Aの方が血圧を下げる効果が高いという対立仮説を立て、ウィルコクソンの順位和検定を行う。A, Bのデータを併せ、血圧が低い順に1から6までの番号(順位)を付与した時、A, Bそれぞれの順位和を答えよ。

選択肢

① A: 3, B: 8
② A: 5, B:16
③ A: 7, B: 14
④ A: 9, B: 12
⑤ A: 10, B: 11

答え ② A: 7, B: 14

解説

前提知識

ウィルコクソンの順位和検定

データが正規分布に従わない場合やサンプルサイズが小さい場合に、2つの独立したサンプルが同じ母集団から来ているかどうかを比較するための非パラメトリック検定。

順位付け

A, Bを値が小さい順に番号を割り振ると、順位は以下の通りになります。

式1

\begin{align}
\begin{bmatrix}
135, 127, 131 \\
132, 144, 138 \\
\end{bmatrix} =
\begin{bmatrix}
4, 1, 2 \\
3, 6, 5 \\
\end{bmatrix}
\end{align}

次に、A, Bそれぞれの順位和を計算します。

式2

\begin{align}
&A = 4+1+2 = 7 \\
&B = 3+6+5 = 14 \\
\end{align}

したがって、順位和はAが7, Bが14になります。

問題5-2

帰無仮説下でAの順位和が4以下になる確率を答えよ。

選択肢

① 0.05 ② 0.10 ③ 0.20 ④ 0.25 ⑤ 0.50

答え ② 0.1

解説

組み合わせ

Aの順位和が4以下になる確率は『Aの順位和が4以下になる組み合わせ』÷『Aが取り得る組み合わせ』によって求めることができます。

  • Aの順位和が4以下になる組み合わせ
    ⇨ 2パターン: (1, 2, 3), (1, 2, 4)
  • Aが取り得る組み合わせ
    ⇨ 20パターン: 式3参照

式3

\begin{align}
{}_6C_3 = \frac{6 \cdot 5 \cdot 4}{1 \cdot 2 \cdot 3} = 20 \\
\end{align}

式4

\begin{align}
P(A \leq 4) = \frac{2}{20} = 0.1 \\
\end{align}

したがって、Aの順位和が4以下になる確率は0.1になります。

問題5-3

別の患者データを用いて、同様の仮説に対するウィルコクソンの順位和検定を行ったところ、片側p値が3%未満になった。この時、最低でも何人以上の患者が居たか答えよ。なお、ウィルコクソンの順位和検定の片側p値は、Aの順位和がn以下になる確率と一致する。

選択肢

① 8人(A: 4人, B: 4人)
② 7人(A: 3人, B: 4人)
③ 6人(A: 3人, B: 3人)
④ 5人(A: 2人, B: 3人)
⑤ 4人(A: 2人, B: 2人)

答え ② 7人

解説

組み合わせ

患者の人数ごとに最も偏った結果(Aの順位和が最小になる組み合わせ)が出る確率は『1』÷『Aが取り得る組み合わせ』によって求めることができます。そのため、まずは人数ごとの組み合わせを求めてから、確率を計算します。

式5

\begin{align}
&{}_8C_4 = 70 \longrightarrow \frac{1}{70} = 0.014 \\
&{}_7C_3 = 35 \longrightarrow \frac{1}{35} = 0.029 \\
&{}_6C_3 = 20 \longrightarrow \frac{1}{20} = 0.050 \\
&{}_5C_2 = 10 \longrightarrow \frac{1}{10} = 0.100 \\
&{}_4C_2 = 6 \longrightarrow \frac{1}{6} = 0.167 \\
\end{align}

したがって、片側p値が3%未満になる最低の人数は7人になります。

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