【解説】統計検定準1級 2018年問題2

諸注意

  • 問題本文は公式サイトまたは公式問題集を参照してください
  • 統計検定2級の資格を持つ方を前提に解説していきます

問題2-1

確率変数\(X_i\)には1と0がランダムに5個ずつ格納されている。期待値\(E[X_i^2]\)を答えよ。

答え 0.5

解説

前提知識

期待値の計算

期待値は『起きた時の値\(X_i\)』×『起きる確率\(P(X_i)\)』の総和で求めることができます。

式1

\begin{align}
&E[X_i] = \sum_{i=1}^n X_i \cdot P(X_i) \\
\end{align}

期待値の計算

問題文より、\(X_i\)が1を取る確率が5/10(10件中5件), \(X_i\)が0を取る確率が5/10になります。ここから以下の通り期待値\(E[X_i^2]\)を計算することができます。

式2

\begin{align}
E[X_i^2] &= 1^2 \cdot P(X_i=1) + 0^2 \cdot P(X_i=0) \\
&= 1 \cdot \frac{5}{10} + 0 \cdot \frac{5}{10} \\
&= 0.5 \\
\end{align}

したがって、期待値\(E[X_i^2]\)は0.5になります。

問題2-2

\(i \neq j\)の時、期待値\(E[X_iX_j]\)を答えよ。

答え 2/9

解説

組み合わせ

まず、\(X_i \cdot X_j\)の組み合わせは以下の4パターン存在します。

  • \(X_i=1, X_j=1\)
    ⇨ 結果:1
  • \(X_i=1, X_j=0\)
    ⇨ 結果:0
  • \(X_i=0, X_j=1\)
    ⇨ 結果:0
  • \(X_i=0, X_j=0\)
    ⇨ 結果:0

また、\(X_i\)と\(X_j\)は独立ではありません。例えば\((X_i=1)\)の時、\(X_j\)が1(\(X_i\)と同じ値)を取る確率は4/9(9件中4件), 0を取る確率は5/9になります。

式3

\begin{align}
&P(X_i = X_j) = \frac{4}{9} \\
&P(X_i \neq X_j) = \frac{5}{9} \\
\end{align}

ここから各組み合わせが起きる確率を求めます。

式4

\begin{align}
&P(X_i=1, X_j=1) = P(X_i=1) \cdot P(X_i = X_j) = \frac{5}{10} \cdot \frac{4}{9} = \frac{4}{18} \\
&P(X_i=1, X_j=0) = P(X_i=1) \cdot P(X_i \neq X_j) = \frac{5}{10} \cdot \frac{5}{9} = \frac{5}{18} \\
&P(X_i=0, X_j=1) = P(X_i=0) \cdot P(X_i \neq X_j) = \frac{5}{10} \cdot \frac{5}{9} = \frac{5}{18} \\
&P(X_i=0, X_j=0) = P(X_i=0) \cdot P(X_i = X_j) = \frac{5}{10} \cdot \frac{4}{9} = \frac{4}{18} \\
\end{align}

最後に、これまでの値を用いて\(E[X_iX_j]\)を計算します。なお、余白の都合により組み合わせが起きる確率\(P(X_i=1, X_j=1)\)を\(P(1,1)\)と表記しています。

式5

\begin{align}
E[X_iX_j] &= 1 \cdot P(1, 1) + 0 \cdot P(1, 0) + 0 \cdot P(0, 1) + 0 \cdot P(0, 0) \\
&= 1 \cdot \frac{4}{18} + 0 \cdot \frac{5}{18} + 0 \cdot \frac{5}{18} + 0 \cdot \frac{4}{18} \\
&= \frac{2}{9}
\end{align}

したがって、期待値\(E[X_iX_j]\)は2/9になります。

問題1-3

標本平均\(\bar{X}=\frac{1}{5} \sum_{i=1}^5 X_i\) の分散\(V[\bar{X}]\)を答えよ。

答え 1/36

解説

前提知識

分散の計算

  • 式6-1: 値から求める方法
  • 式6-2: 期待値から求める方法

式6

\begin{align}
&V[X] = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^n(X-\bar{X})^2 &(1) \\
&V[X] = E[X^2] – E[X]^2 &(2) \\
\end{align}

\(E[X_i]\)の計算

後ほど計算で使用するため、予め\(E[X_i]\)を計算します。

式7

\begin{align}
E[X_i] &= 1 \cdot P(X_i=1) + 0 \cdot P(X_i=0) \\
&= 1 \cdot \frac{5}{10} + 0 \cdot \frac{5}{10} \\
&= 0.5 \\
\end{align}

\(E[\bar{X}]\)の計算

\(\bar{X}\)を展開後、期待値の線形性を用いて\(E[\bar{X}]\)を求めます。

式8

\begin{align}
E[\bar{X}] &= E\left[\frac{1}{5}(X_1+X_2+X_3+X_4+X_5)\right] \\
&= \frac{1}{5} \cdot (E[X_1]+E[X_2]+E[X_3]+E[X_4]+E[X_5]) \longleftarrow E[X_i]=0.5 \\
&= \frac{1}{5} \cdot (0.5 \cdot 5) \\
&= \frac{1}{2} \\
\end{align}

\(E[\bar{X}^2]\)の計算

\(\bar{X}^2\)を展開後、期待値の線形性を用いて\(E[\bar{X}^2]\)を求めます。計算過程で問題2-1の答え\((E[X_i^2]=1/2)\)と問題2-2の答\((E[X_iX_j]=2/9)\)を代入します。

式9

\begin{align}
E[\bar{X}^2] &= E\left[\left(\frac{1}{5}(X_1+X_2+X_3+X_4+X_5)\right)^2\right] \\
&= E\left[\frac{1}{25}(X_1+X_2+X_3+X_4+X_5)(X_1+X_2+X_3+X_4+X_5)\right] \\
&= \frac{1}{25} \cdot E[X_1^2+X_2^2+…+2X_1X_2+2X_1X_3+…] \\
&= \frac{1}{25} \cdot (E[X_1^2]+E[X_2^2]+…+2E[X_1X_2]+2E[X_1X_3]+…) \\
&= \frac{1}{25} \cdot ((1/2) \cdot 5 + 2 \cdot (2/9) \cdot 10) \longleftarrow \text{補足あり} \\
&= \frac{5}{18} \\
\end{align}

組み合わせの補足

  • \(E[X_i^2]\)の組み合わせ(○)は5通り
    ⇨ \((E[X_1^2]+E[X_2^2]+…) \longrightarrow ((1/2) \cdot 5)\)
  • \(E[X_iX_j]\)の組み合わせ(▲と▼)は10通り× 2
    ⇨ \((2E[X_1X_2]+2E[X_1X_3]+…) \longrightarrow (2 \cdot (2/9) \cdot 10)\)

\(X_1\)\(X_2\)\(X_3\)\(X_4\)\(X_5\)
\(X_1\)
\(X_2\)
\(X_3\)
\(X_4\)
\(X_5\)

\(V[\bar{X}]\)の計算

式6-2, 8, 9より、分散\(V[\bar{X}]\)を求めます。

式10

\begin{align}
V[\bar{X}] &= E[\bar{X}^2] – E[\bar{X}]^2 \\
&= (5/18) – (1/2)^2 \\
&= \frac{1}{36} \\
\end{align}

したがって、\(V[\bar{X}]\)は1/36になります。

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